2013/02/10

エレベータの開閉ボタンのデザインについて

間違えやすい「エレベーターの開閉ボタン」をJAYPEGでデザイナーたちがリデザインしてみた
エレベータの開閉ボタンは、5年くらい前になろうかSFCのインターフェースデザインの授業で、ある受講者たちのグループがリデザインしていて、私も彼らの発表で議論したのでよく覚えている。
当時私は、以下の旨を主張し、議論になったように記憶している。

  • ボタンに表示される状態が次の状態を表す(つまり状態遷移命令の内容が表示される)べきか、ボタンに表示される状態が現在の状態を表す(閉と表示されていたら閉じている)べきか。どちらにも標準化はされておらず、世間のインターフェースは混乱している。
  • 色に意味を持たせてはならない。
    • 赤色のボタンは危険になることをあらわすのか、それとも危険を回避することを表すのか。緑のボタンは安全であることを表すのか、それとも安全を求めるときに押すのか。赤は注意を喚起し危険を表すとはいうが、これから危険になることを表すのか、現在危険であることを表すのか、未だ標準はないし、標準化の見込みもない。

2013年になってまたこの話題に触れて、更にこのように意見する。

  • モーダルなボタンは認知負荷がかかる。いまボタンは閉ボタンか開くボタンかを認識してから押さないといけない。認識が間に合うか。
  • 扉のように少なくとも4状態以上の状態をもつマシンに対して、1つのボタンが2つのモードをもち開閉ボタンとして機能するトグルスイッチは、ユーザインターフェースとマシンの状態が対応していないので不完全だし分かりにくい。
  • 加えて、人の通る扉は安全のため厳密にモードレスである必要がある。モーダルであると知らないユーザによる意図的な連打や、意図しない連打、チャタリングのリスクを考えなくてはならないので。
  • デザインやリデザインそのものが目的化してはならない。

以上のようなアンチパターンの結果として許されるデザインは非常に限られていて、既存のデザインからあまり逸脱できず、デザイナーとしてはおもしろみがないのだが、失敗の許されないマシンのデザインというのは、まぁこんなもんだろうと思っている。エレベータも扉も非常に歴史が長い。電動のエレベータですら100年以上歴史があるものなのだから、既に基本的なインターフェースは出尽くしているということはすこし頭においておいたほうがいい。

関連する話題でおぞましい記事をみつけたので意見する。これが元パナソニック企画部、現在もモノをつくる会社のトップにいる人間による記事だという。おそろしい。
「挟まる人が居ても怪我はしないようエレベータ側にFailSafeが仕込まれている」
エレベーターの閉じる/開くボタンのUI改善 ~日本マーケット向けの決定打は『ひらく』ボタンの撤廃だ~

エレベータの扉レベルのフェイルセーフに頼るのが安全といえるか甚だしく疑わしい。
全員が降り乗りを終える前に勝手に閉まることがあるし、ぶつかることがあるし、挟まることがあるし、怪我をすることがある。だからこそ開くボタンを押しつづけなければならないという不便なことになっているのは、すこし観察力のあるエレベータ利用者なら誰も知っていることだと思う。

実際、私は開ボタンから手を離した瞬間に閉じはじめるおそろしいエレベータに出くわしたことがある。私が降りるとき開くボタンを離した瞬間に扉が閉じはじめたので腕を打って痛い目にあった。これは彼の言う「怪我」には入らないのだろうが、単なる打ち身でも痛みの記憶は忘れないものだ。
開くボタンを離してから閉じはじめるまでのタイムラグはエレベータの設定によるのだろうが、そのような設定が可能なのがエレベータという製品であるということを忘れてはいけない。
エレベータの扉のフェイルセーフといってもいろいろある。先進的なものは光センサなどの非接触センサであるが、古いものは接触センサ(というより押し込みセンサ)になっていて、センサにはさまれるとそこそこ痛い。運悪く斜めにセンサに当たると(結構固いので)そこそこの痛みを味わう。
たしかに扉のフェイルセーフのおかげで、人が扉に挟まれて大怪我をするような事故は滅多におこらない。ただ、いちいち扉にぶつかって青あざを作るようなデザインがこの人のいうUIのリデザインなのか。誰のためのデザイン?それを日本マーケットが受け入れると本当に思うのか?


この記事の著者が書いている、閉ボタンがよりすり減るから使用頻度が高いというのが本当だと仮定しても、閉ボタンがすり減るのは、単に使用回数が多いことを示すだけでなく、開くボタンと違って連打できる(危険なく手を離せるからこそ、気兼ねなく連打できる)からではないか、と反論できてしまう。

嗚呼、こんな記事を書く前にすこしエレベータに乗って観察してみたらいいのに。混んだエレベータから人が降りる(しかも降りたい人だけが降りなければならない)ときの、ややこしさやかかる時間の長さを知らないのだろうか。辞めた人間をつかまえて企業の批判をすることになるのは良くないが、この人がパナソニックの看板を背負って記事を書いているのであえて書こう。パナソニックならどうデザインする?

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